音までおいしいホットケーキ — わかやまけん『しろくまちゃんのほっとけーき』より

今日の一皿

 ホットケーキが焼ける場面に、子供のころ夢中になったという人も多いはず。

 わかやまけんの絵本「こぐまちゃんシリーズ」の傑作『しろくまちゃんのほっとけーき』より、あの名場面を振り返ります。

​ぽたあん どろどろ ぴちぴちぴち

ぷつぷつ やけたかな まあだまだ​

 1972年の刊行以来、300万部以上も刷り重ねられてきたロングセラー絵本。ページをめくれば、あの鮮やかなオレンジ色の背景と、ホットケーキの焼ける香ばしい匂いが、何十年という時を超えて鼻腔をくすぐります。​

 特筆すべきは、中盤の見開きいっぱいに描かれた調理場面のオノマトペ。

 フライパンの上で生地が変化していく様子を、「ぷつぷつ」「ふくふく」といった魔法の擬音で捉えたこの場面は、日本の絵本史に残る最高峰のシズル感と言えるでしょう。​

今日の一皿「しろくまちゃんが焼いたホットケーキ」

 絵本を読み終えたら、ぜひ台所へ。

材料卵1個、牛乳150ml、薄力粉200g、砂糖大さじ2、ベーキングパウダー小さじ2。
コツフライパンを一度濡れ布巾で冷ますこと。これで、絵本のようなムラのない焦げ茶色が手に入ります。

何世代も読み継がれる絵本の魅力

 私が子供だった頃、母は子供達に何度も「しろくまちゃんのほっとけーき」の読み聞かせをねだられ、ついにはキッチンからそらで読み聞かせをするまでになっていたそうです(笑)

 私の子供も、生後数ヶ月から、コントラストの強い鮮やかな色彩と心地よいリズムに目を輝かせていました。​

 なぜこれほどまでに、私たちはこの絵本に惹かれるのでしょうか。 それは、しろくまちゃんが材料を揃え、がたごと揺れるボウルを必死にまぜ、自分の手で焼きあげる「自立と達成の物語」だからかもしれません。

 最後には友達のこぐまちゃんと分け合って食べる食卓の温かさ。この本には、人間が「食べること」に抱く根源的な喜びのすべてが詰まっているようです。​

 かつて母がキッチンから(そらで)読み聞かせてくれたあの声。

 今度は私が我が子に、焼きたての湯気の温かさや、誰かと食べる嬉しさと共に、この物語を伝えていこうと思います。​

 それではどうぞ、童心にかえって召し上がれ。

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